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ノーベル賞から4年。「iPS細胞」はここまで進化した!

サイエンス作家・竹内薫のノーベル賞プレイバック講義【第四回】

汎用免疫型が広げる医療への可能性

 iPS細胞はいますごく応用がひろがっています。ひとつの可能性がHLAホモと呼ばれる特殊な免疫の型です。血液型にO型のように誰にでも輸血できる型があるように、免疫にも拒絶反応を起こさずに誰にでも移植できるタイプがあるんです。これがHLAホモです。免疫にタイプがあるというのは昔から言われていたわけですけど、汎用性のある免疫タイプをiPS細胞で実用化しようとしている所が山中(伸弥)先生のプロジェクトのすごい点ですね。

 そういう免疫タイプを持つ人の細胞からiPS細胞を作ると、それは誰にでも移植できるんです。これはすごい事ですよ。つまり一般人でも再生医療の恩恵に預かることができる。誰にでも移植できる特殊なタイプの免疫のiPS細胞をたくさん作ってストックできれば、コストも押さえられ万人が利用できる。

 これをあらかじめ自分が健康なうちに自分の細胞をとっておいて…とやると莫大なお金がかかります。億万長者ならいいですよ――もう自分は百億円お金を持っているからそのうち10億円を使って、iPS細胞で自分のいろんな臓器を作っておこう――そんなことお金持ちはできるけど一般人にはできないですよね。

 体のパーツでも再生しやすいものとそうでないものがあります。歯や眼、あとは心筋等は比較的再生が容易です。先日、信州大学らのチームがiPS細胞でサルの心筋梗塞の治療に成功したというニュースもありましたね。こういったパーツから始めていくんだと思います。3Dプリンターなどで臓器そのものをつくってまるごとそのものを移植しましょうというのは将来的には可能性があると思いますが、いまはまだ先の話でしょう。

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竹内 薫

たけうち かおる


 



1960年、東京生まれ。サイエンス作家。東京大学卒。マギル大学大学院博士課程修了。理学博士。「サイエンスZERO」(NHK Eテレ)のナビゲーターも務める 。

 


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